歌姫浜崎あゆみ『Duty』誕生秘話
絶望の3部作を軸に制作され、予約だけで300万枚を突破。Ayuのオリジナルアルバム作品で一番の売上を誇る大ヒット作であり、更にTV番組で紹介された生涯最高のオリジナルアルバムランキングでも第1位になる程、人々から高い支持を集め続ける作品。ジャケット写真で表現したヒョウ柄や赤リップが大流行し、ファッションリーダーとしの側面も強く出た、音楽性とファッション性がひとつとなったAyuの真骨頂と言える今作。正に頂点に君臨する歌姫が誕生させた音楽史上最高傑作となる『Duty』を歴代のインタビューを元に紹介。
ツアーの影響が反映された伝説の名盤『Duty』
Ayu「このアルバムって、ツアーで得たものが大きくてできたっていう感じがあるから、すごく反映されてると思う」
Ayu「でも、ツアーが終わって得たものでアルバムを作ったというよりは、ツアーが始まる前に『vogue』『Far away』『SEASONS』の3部作があって、その頃の自分がいて、ツアーをやりながら闘ってた自分がいて、最終的にツアーを終えることができて、今こうして楽しく過ごせてる自分がいてっていう、その全部の流れをこのアルバムには入れたいって思ってた。だから、『vogue』の頃の自分の前後になる曲があって、『Far away』の前後になる曲があって、で、最後の『SEASONS』があって、その後のツアーが終わってからの自分っていうふうな感じ」
『girlis』はツアーが終わってからの心境なのかという質問に対して
Ayu「う~ん、そうだと思う。こんな感じでいこうよ、みたいな。うん」
『girlis』の歌詞が良いですよねという質問に対して
Ayu「でも、なんか、もうそんな感じだよね。今、あゆくらいのコとか、まぁちょっと上とか下だとかするコたちと集まって、なんか話ながら、できちゃったような感じの曲ですね。歌詞的には」
表題曲『Duty』について
Ayu「この詩は昔の『vogue』を書く前とかその辺りの自分の状況みたいな感じだから」
『Duty』の題名について
Ayu「時代って、ずっと移り変わってきてるでしょ。で、その移り変わるところもみんな見てるでしょ。いろんな犯罪があって、いろんなニュースがあったりして、歴史が塗り替えられて、そうやってひとつの時代が終わっていくのを見てて、いつまでも自分らも若いわけじゃないし、いつまでも傲観者ではいられないし、『エッ、わかんない』なんて言ってられないよっていう感じがしたの。で、それが今のあゆが伝えることっていうか、自分のすべきことみたいに思ったから、こういうタイトルにしたんですけどね。」
『Duty』の『確かにひとつの時代が終わるのを 僕はこの目で見たよ だけど次が自分の番だってことは 知りたくなかったんだ』という歌詞について
Ayu「僕=Ayuじゃなくて、Ayuも含む世の中の人々のこと。世紀末だと騒がれて、信じられないような事件が起こってる。そんな時期を自分たちはちょうど生きてるわけでしょ。そのひとつの荒れた時代が終わると、今度は君たち (次の時代)の番だよと。君たちもいつまでも傲観者じゃいられないし、いつまでもAyuが答えを出していけるわけでもないんだって。そいうことを伝えるべきだなと」
表題曲『Duty』のレコーディングについて
Ayu「『Duty』はレンジが2オクターヴあったんですよ。で、ビックリして(笑)。初めてそんな曲歌ったから、ちょっと苦労したかな。上よりも下がね、大変だった。まあ、全体的には余裕があったというか、ツアーをやる前みたいには構えなかったって感じはありましたけどね」
アルバム『Duty』のイメージ
Ayu「『A Song for ××』のときは、自分を知ってほしいという気持ちが強くて自伝的な内容になった。『LOVEppears』のときはいろんな人から愛をもらってることを実感して、愛の形というものを書いてみようと思った。今回はもっと広い視野で世の中を見ているという感じがあって、それはアルバム・タイトルにも表れてる」
浜崎あゆみに対する世間の見方が、少なからず影響してるわけですねという質問に対して
Ayu「うん。これまでより社会的な感じかもしれない」
流行りの音を取り入れる事で題名や詞が誕生して行った『vogue』
Ayu「『vogue』のようなエイキゾチックなサウンドって、誰かしらが発表して、また、忘れたところに別に誰かが出して流行でしょ?ファッションにしてもそうだけど、『流行り』って繰り返すし・・・。この頃のAyuは、なんとなくだけど、ちょっとそういう音をやりたいなと思ってた。きっかけは、『じゃあ、やってみようかな?流行りもんだし』くらいの感じ?で、実際にそういうことを考えてたら『流行り』『流行』という意味の『vogue』ってタイトルが出てきた。『vogue』のような曲はAyuっぽくないとか、キライな人もいると思うけど、『みんながイメージするAyuらしさ』、『直球、ドーンみたいな曲』は、今はつくりたくないし、逆にその反対をやりたい。どこかひねくれてるのかな、Ayuは」
『SCAR』について
Ayu「大事な人とケンカしてしたときに、あぁもう私って日本でいちばんツラいと思ってベランダに飛び出したのね。そしたらすごい数の窓の明かりが見えて、いちばんツラいなんて思うのは違うなぁと思った。だって、あのどこかでは、この人こそ運命の人というような出会いがあって、その隣ではもう一生会わないっていう別れが合あって、また別のところではカップルが今いちばん楽しいっていう時を過ごしてて、その隣では大切な人を事故で失くしてたりするわけだから。そんなことを考えてたらこの詞が浮かんできた」
『Far away』について
Ayu「『Far away』は、99年10月、Ayuの誕生日に作曲してくれたカズ坊と長尾さんの2人が贈ってくれた作品なんです。最初、Ayuは『誕生日に2人がMDをプレゼントしてくれる』って聞いて、そのMDは2人が『Happy Birthday』を歌い、最後には、『誕生日おめでと~うっ!』とか言ってるもんだと勝手に想像してた(笑)。もらう前は、正直『うわぁ、サブッ!』って思ってたね(笑)。でも、聴いてみたらAyuが想像してた『Happy Birthday!』は入ってなくて・・・代わりに2人が密かにつくってくれた曲=『Far away』のメロディーが入ってた」
『Far away』の詞について
Ayu「歌詞に関しては・・・タイトルからもわかる通り、遠くに行きたかったのかなぁ(笑)。いや、実際に遠くにいくんだけどね、その頃のAyuは。と言っても、車で3時間くらいの所なんだけど・・・。で、そんな都心から遠いようで近い所を、何日かグルグルと移動してた。なんか、いつも目にしてる景色を見たくなかったんだよね。それに、誰とも連絡を取りたくなかったし・・・。ちなみに、マネージャーからの電話には、あたかも家にいるような感じでしゃべってた。マネージャーは薄々勘づいてたみたいだけど・・・(苦笑)」
『SURREAL』について
Ayu「何かすごく現実的なことを書きたかったっていうか、Ayuはよく現実逃避をする癖があるので、現実的なことを書いて、そういうタイトルにしたいと思ったんです(笑)。だから、詞の『いくらどうでもいいなんて言ったって 道につまづけば両手ついてる』っていうのも、実は友達の話なんです。そのとき彼女は、『どうせ私なんて、どうなってもいいわ』ぐらいの事を言いながら、すごく泣いたんですよ。なのに転んだら、パッと手をついて、思いっきり自分を守ったんですね。それを見ながら『ああ、どうでもよくないんだなぁ~』と思って。たぶん、Ayuも『どうにでもなれ』って思っていても、道ですっ転んだら、とりあえず自分を守ると思うけど(笑)」
『SURREAL』の制作について
Ayu「『SURREAL』のレコーディングはすごくスムーズに進んだ方だと思う。ただ、この曲くらいからロックな感じを意識しだして、やろうと思っていたから、それまで何も言わなくても、少ない言葉でわかり合えてたHALさんに対して、『Ayuはこう変えていきたい』っていうのを伝えるのが難しかった。HALさんたちもどこまでやっていいのか、わからなかっただろうし・・・。そのコミニケーションの部分には、すごい時間がかかったね」
『SURREAL』の音作りについて
Ayu「当時はこの『SURREAL』がAyuの新境地みたいに思ってたけど、今聴いてみると、どこか恐れもあったような気がする。実際、それまでとはちがうサウンドに変えてしまうことに対して不安もあったし・・・。今までの自分とこれからの自分とを模索しながら、この曲は生まれたって感じがする」
『SURREAL』のMVについて
Ayu「ラナイ島で撮影したプロモーション・ビデオの思い出は、何と言っても、撮影日の朝型、Ayuがメイクしている後ろで、疲れ切った顔をしたマネージャーが突然いろんな色のペンを出して『HAPPY』って書いてたこと(笑)。Ayuもそうだけど、スタッフたちも撮影の2~3日くらい前から全く寝れてない状況だったからね。だから・・・壊れてたんだと思う(笑)。でも、なぜ『HAPPY』なのかは謎だけど」
人工的に森を作り撮影された超大作
Ayu「ただのベローンとしたゴルフ場で撮影したんだけど、そこに森とかを作ったの、すごい人数で。でも、そうは見えないみたいで・・・(笑)。プロデューサーも『CGにしかみえねぇよ』って言ってました」
山頂や崖での撮影について
Ayu「ふふふ・・・。いやぁ~、実はマネージャーがおんぶしてくれて」
実は番長も登場していた撮影
Ayu「Ayuが目の合うシーンが見どころかな。実はあれ、片方、番長 (ネイル・アーティスト三浦加納子)なの。(一部抜粋)」
Ayu「後ろ姿なのが、番長なの。ヒョウで (白ドレスのAyuを)見てるのはAyuで、ヒョウのAyuを見てる (白ドレスの)Ayuが番長なの」
Ayu「わかんないでしょ?あれは、特殊な合成ではなく、実は番長でしたみたいな(笑)」
アルバム『Duty』の構成について
Ayu「前半の自分は、人間の汚いところばかりに目がいってて、自分の卑怯なところばかりが気になってて、情けなくなってたけど、『Far away』でやっと『新しく私らしくあなたらしく生まれ変わる』って書けたなと思って。そこからはどうはい上がって、今こんなに楽しい気持ちでいられるんだろうって思いながら書いたら『SURREAL』で『どこにもない場所で 私は私のままで立ってるよ』というフレーズが出て来た。じゃあ、今度はなんでそう思えるようになったのかっていうと、やっぱりツアーで出会った観客の力が大きかったよねというので、次の『AUDIENCE』につながってく」
『AUDIENCE』の『別に誰より先を歩いて行こうなんて気持ちはなくてね だからと言って誰かの後ろからついてくワケでもないけどね』について
Ayu「その部分の歌詞で、Ayuは今回のアルバムでのリスナーに対する自分の姿勢を象微したつもり。誰が前でも後ろでもなく、みんな並べばいいじゃんって思うのね。誰かがアクションを起こしたときに、YES!と思ったら、一緒に始めようって」
歴史的な名曲となった『SEASONS』について
Ayu「最初は、『昨日のことを悔やんだり、明日を期待したりしても、自分は今をどうにかすることしか出来ない』ってことを書こう思った。でも、詞を書いてる過程で、その自分が存在している『今』ですら否定してしまうAyuがいることに気が付いて・・・。『SEASONS』は、そんな心の葛藤を表現した作品。そういう意味では、すごくわかりやすいというか、精神状態が詞に表れるアーティストだなって思いますね。3部作の『vogue』、『Far away』、『SEASONS』は制作するのにすごく時間がかかった作品。詞が書けずに悩んだ時期もあったし、レコーディングに行っても歌えなかったことや行っても途中でスタジオを後にして帰ってしまったこともあった・・・(苦笑)。普段、絶対にそんなことはしない人なんだけどね、Ayuは。そして、3曲とも今は絶対書けない!消されてしまったら・・・もう思い出せないかもしれない」
キー合わせについて
Ayu「今までは『浜崎あゆみの声』というモノをスゴく気にしてたところがあって、どれを聴いても『ああ、Ayuの曲だ』っていうんじゃなきゃっていう部分があって、キー合わせをする時に、一番声が晴れるところ・・・・・、上だったら映えるところだし、下だったら曇っちゃわないところっていう部分で決めてたんだけど、今回は『スゴく低めで歌いたいから』とか『この曲は丸い感じの声で歌おう』とか、逆に『細い声で歌いたいから、ギリギリの(高い)ところにキーを設定しよう』とか、キー合わせの時から自分の歌い方を想像しながらやってましたね。いや、!?・・・・・、詞を書く時からかな。もうこれはギリギリ高くいきたいと思った曲があるとするじゃないですか。そうすると発声的に【イキシチニ・・・・・】の音だと高い声が出やすいということは自分で分かっているから、一番トップの音に来た時に【イキシチニ・・・・・】が来るように言葉を持ってきたりとか、詞を書きながら意識しましたね」
浜崎あゆみという存在だけでなく、アルバム自体も社会現象を巻き起こし、音楽史上最高傑作と評される作品にまで成長した歴史的名盤『Duty』。逃れられない歌姫としての宿命と葛藤しながら生まれた『Duty』は、伝説として音楽史に刻まれる事となった。
引用元:【2000年11月1日発行11月号Vol.012】【VOL.46-2000】【通巻号135号2000年10月30日発行】【2000年11月19日発行11月号】【2000年11月号】
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